空前絶後のブログ

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けものフレンズはなぜ流行ったのか?考察してみた

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話題沸騰、絶賛放映中のアニメ「けものフレンズ」。最近ではニコニコ動画にて300万再生という快挙を成し遂げたそうで。すっごーい!

 

 

1話がニコ動で視聴できますのでまだの方はぜひ!簡単にストーリーを説明しますと

 

ジャパリパークで元気に暮らすサーバルは、ある日、名無しの迷子と遭遇。「かばん」と名付けられた迷子の“正体”を突き止めるため、張り切って図書館を目指すことに…!

 

引用:公式サイト

 

こんな話から始まり、毎話フレンズと呼ばれる擬人化された動物たちと出会い、彼女らの悩みを解決していくロードムービーとなっています。

そんなアニメ『けもフレ』ですが、完全に今期アニメのダークホース的存在だったというのが大方の評価なようで。

実際CGなどを見ていただければ分かりますが、低予算・少人数での製作だというのが伝わってきます。そんなけもフレはなぜこれほどまでに話題になったのか?というのを今回は考察していきたいと思います。

 1、けもフレはステマ

もはや話題になったアニメが避けては通れない批判の1つ、ステマ。けもフレも当然その疑惑が向けられるわけですが、俺はその可能性は相当低いと考えています。

 

まずけもフレは元々メディアミックス作品であり、先行して漫画とアプリがリリースされていました。しかしアプリは終了済、漫画も連載終了が決定しています。もしステマを打つならもっと早い段階でも良いわけですし、そもそもより実入りの少ない状態で更にお金をかけてステマするでしょうか?少なくとも合理的とは言えません。

そしてもうひとつ、けもフレが流行るきっかけとなったのが

 

ふたばでのこのやり取りがネットに拡散されたからです。もともとは細々とふたばで盛り上がっていたのがツイッターで広まり、そこから2ch・動画サイトでも話題になった・・・という経緯がありました。

もし貴方が色々な媒体で同時にステマをするとして、このように徐々に広がっていくような形にわざわざするでしょうか?うまく広がったりステマを隠せるメリットよりも途切れ途切れなまま鎮火してしまうリスクの方が高いのです。

以上のような理由から、けもフレがステマだというのは無理があります。

 

2、サーバルちゃんとバブみ

 

俺はけもフレがはやった大きな理由の一つにキャラクターの魅力があると思っていて。実際登場するどのキャラクターも大好きなのですが、特に主人公の一人、サーバルちゃんは話題作へと押し上げた功労者だと思います。

どういうことかといいますと、まず背景として、最近のオタクな人たちはアニメや漫画の女の子に求めるものが恋愛から母性へシフトしているという事情があります。実際、包容力や庇護力があり世話を焼いてくれるような女性キャラを指すバブみというワードがはやり、テレビにも取り上げられました。

女性キャラと恋愛してみたい、よりも甘えたい・癒されたいという人が増えているのですね。よくある例えですが

 

昔よくあった「〇〇は俺の嫁!!」

 

というフレーズよりも

 

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「ママーッ!」

 

の方が多くなっているのです。

 


サーバルちゃんはかばんちゃん(もう1人の主人公)がダメなやつだと落ち込めば「へーきへーき! フレンズによってとくいなことちがうから。」と励まし、長所を見つけてくれれば「すごいよ!あなたの強いところだんだんわかってきたよ!」と褒めたたえ、誰かに批判されれば「そんなことないよ!」と守ってくれます。

そこに嫌味はなく、ただ素直に肯定しようという他者への優しさと母性に溢れています。

バブみが流行る原因は置いておいて、サーバルちゃんのキャラクターは、そうした潮流にうまく乗っており、これが作品の大きなアドバンテージになったと言えます。

 

3、ミーム汚染

上でも少し触れていますが、けもフレが流行った発端は

 

すっごーい!

たーのしー!

わーい!

〇〇が得意なフレンズなんだね

 

といった特徴的な語録群を使ったファン同士のやり取りがあり、それを見て面白がった人が使いだして、それを見た人がまた使う・・・というような循環がありました。

ところでこうした事は実はネットでは初めてではありません。例えば淫夢とよばれる層の間では淫夢語録という共通言語があり、「そうだよ(便乗)」、「入って、どうぞ」、「お、待てい」といった語群でコミュニケーションが成立するのです。

淫夢というコンテンツはネット全体に広がりましたが、それを支え強力に後押ししたのがこの淫夢語録でした。実際、他にもレスリング厨、なんJ民、VIP、ニュー速民、ふたばなど、インターネットで広がる大きなコミュニティにはこうした共通言語が必ずあります。

ただ、最近の傾向として、こうした共通言語は「これすき」、「草」など、より単純で感情に直結したものが求められていました。

こうした傾向にちょうど上手く合致したのがけもフレ語録だったと言えます。つまりまとめると、けものフレンズはキャラクターの造形という点において、最先端のネットの流れを見極め上手く乗った作品だったと言えます。

 

4、隠された本格的なSF要素

 

けものフレンズが流行った理由について、ネットマーケティングという点から考察してきましたが、もちろんその内容も素晴らしいのです。

基本的な話の流れは、前述したようにサーバルちゃんとかばんちゃんのロードムービーです。サーバルキャットのフレンズ・サーバルちゃんと、「かばんちゃん」がなんのフレンズか調べに行くわけですが、かばんちゃんはその造形といい能力といい「人間」だとしか思えない描写が続きます。しかしフレンズ達は人を知らず、また明らかに人間の手によって作られたじゃぱりパークにも人の姿は見えない・・・

かばんちゃんの出自は?人間たちはどうなったのか?サンドスターとセルリアンの関係は?フレンズとはいったいなんなのか?

話が進むにつれて伏線が少しずつ回収されたり張られたり。わきあいあいとしたお話かと思いきや、その裏には重厚なSFともいえる設定があることが察せられます。ファンは先の展開や明かされていない設定を予想することを楽しんでいるのです。実際、ツイッターでは#けものフレンズ考察班というタグができるほど、考察が盛り上がっています。俺も色々考察を楽しんでおりますので、そちらもこのブログで書ければなと思います。

少し嫌な言い方になるかもしれませんが、上述したようなネットにウケる要素としての振り切れた可愛いキャラクターと、重厚で少しダークさを感じる裏設定という組み合わせは話題性という観点から非常にうまいのですね。

少し余談ですが、例えばこういう可愛い絵柄で人が死ぬ、みたいなギャップで売るっていうやり方は実は結構あって外れた作品も少なくないのですが。それは結局、物語にとって、悲劇が「ギャップで売る」という目的以上の意味を持たないからなんですね。

 

 

どういうことかというと、例えば2011年に大きな話題となったまどマギの第3話。可愛い絵柄で人が死んだというギャップはもちろんですが、同時にアンチ魔法少女モノだというメッセージ性が強くあり、その後の話にもその芯がしっかりあった。だから売れたのです。そういう芯を俺はけものフレンズにも感じていて、だからこれは単なる一過性ではなく、作品も売れるだろうなと思います。

 

5、けものフレンズのヒットで期待すること / まとめ

 

 

以上、けものフレンズがヒットした理由の考察でした。たぶんけものフレンズを好きな人にとっての好きな部分ってたくさんあって、例えば動物のしぐさが非常によく観察・表現されている、とか色々あると思います。

なのでこの考察も、俺が企画や脚本・インターネットという部分が好きで、注目しているから出てきたというのは大きいと思います。実際、監督の製作インタビューを読んだのですが・・・

 


読むと、俺の考察したようなマーケティング云々は余り意識されていなかったっぽいです 汗

もちろん、結果論としての俺の考察が間違っているとは思いませんし、大人の事情でぼかした可能性もありますが。しかしこのインタビュー記事、読んでみるとこの話題沸騰な現状には、作品へのスタッフへの愛が重要だという記述は面白いなあと。

 

 梶井:そういうもんなんですよ(笑)。提供する側は、ひたすら愛情を込めて丁寧にマジメに作るだけでいいんです。あとはみなさんが、自由に楽しんでいただければ。

 

※上記リンクより引用

 

で、俺がこのインタビューを見ていて興味深いなと思ったところがもう一つあって。

 

 福原:うち(ヤオヨロズ)はセクションをまたいだときに、作り手の熱が下がるのを阻止するためのチーム造りを心がけています。それこそ吉崎さんと喫茶店で話しているときに出てくる数々のアイデアを、迅速にアニメに組み込んできました。これがもしも、何社もまたいで制作をしなければいけないチームだったら、こんなことはできません。

 

※上記リンクより引用

 

作品へのスタッフの愛と情熱が成功へのカギだとするなら、けものフレンズの製作体制ってとても参考になるなと思うんですね。

 

旧来とは違う新しい作品創作のカタチ・・・

 

例えばある企画があってそれを面白いを感じて情熱を燃やせる人が何人かいるとする。クラウドファンディングで資金を集めて低予算でも高品質じゃなくても良いから形にしてみる。仮にアニメを製作するにしても、MMDなど個人で出来る範囲は広がっています。そうして出来た作品が話題を呼べば、より豊富な資金を投入していきクオリティをあげていく。

これは理想論かもしれませんし、まだまだ現実と溝があるかもしれません。しかし資本や政治の産物のような作品よりも、情熱を持ったチームで創作に打ち込む事が何よりも重視される。そういうところに価値を見出すような、そんな未来がくるんじゃないかなあとけものフレンズを見て思いました。

 

あと俺の個人的な話ですが、そんな時に、よりその作品を好きな人が集まって作れる、広めていける、リスクを減らせる。そんな仕組みが出来れば、もっと創作は面白くなるんじゃないかと思いましたね。そんなウェブサービスを作るぞ!うおー!がおー!